最終日

事実上、会社勤めの最後が土曜出勤てどうなの。って自分で希望した勤務ローテだから仕方ない。 上司不在。 社内閑散。

社外の必須連絡先に、担当変更のメールを一斉送信。一人だけ「存在しないメールアドレス」で未達通知。メールのみのやり取りで若い人らしいってくらいしか知らないが、ひょっとしてあなたも退職したんですか。関連会社とは言え結構な大手グルーブなのに。

夕方、職場の派遣スタッフが引き上げる前に、退職祝いのプレゼントをいただく。 びっくり。 ありがとうございます。いろいろもらった業務の改善要望、ほとんど実現できずに申し訳ない。

今月末までの勤務日程報告、イントラネットで提出してしまう。3度ほど「●連休以上の休みです」って確認表示。うるせえな。こちとらこれから20連休じゃい。ってブラウザに切れてみても仕方ない。そもそも現在の予定通り再就職しないままだと年金もらう前に軽く千連休を超えてしまう。どうでもいいが千連休とせんねん灸は似ている。

社内でほとんど知り合いにも合わず、というか社員そのものがほとんどおらず、静かに定時退社。あとは月末に一度だけ、入館ICカードとか健康保険証とか返しに来るだけだ。

猫なで声で「君に辞められたら困るよ」と言った上司の表情を私はもちろん見なかった

本来は勤務最終日までの日々の出来事を備忘録的に記録しておこうと思っていたのだが、予想以上に引き継ぎ業務に気を取られてそれどころじゃなかったような。

昨年のうちからマニュアル作成を含めて業務引継ぎの準備は進めていたのだが、後任が決まらないと引継ぎはできないし(異動内示は今月初め)、てか自分一人の仕事分だけなのになぜ3人に業務を分けて引き継ぐのか。何度か上司から猫なで声で言われた「お前に辞められたら困る」はほぼ100パーセント社交辞令だと思ってろくに目も合わさず生返事していたが、3パーセントくらいは本音だったのかも。とまあ最後くらいはむりやり前向きにとらえておこう。

仕事の合間のスケジュールを調整して3人に計5回の引継ぎ、本日ようやく終了。お疲れさまでした、自分。

機密書類のシュレッダー用箱詰めも終えて、あとは下書き済みの業務関連に連絡先変更のお願いメールを送るだけ。ばたばたして正直、仕事を辞める実感がまったく湧かないが、実質勤務はあと1日。ふう。

伏し目がちに「先を越されたな」と同期は言った

1月中旬。
社内で最初に「辞めるんだって?」と声をかけてきたのは入社当時にお世話になった1年先輩。先月中旬。ずいぶん耳が早いなと思ったがそういえば一時、人事部にいたんだった。

2月某日。
そっと近づいてきた同期が何故か声を潜めて「聞いたぞ」。って別に不祥事を起こしたわけでもなんでもないのだが。「先を越されたな。オレも考えたことあるんだよなー」。そうなのか。まったくの別部署で新人研修以降は軽い世間話をごくたまにする程度だったが、定年までに平取くらいまではいけるコースに乗ってるとなんとなく思ってたが、そいえば最近の人事異動では名前を聞いてないような。早期退職に関するあまり表に出てない会社の優遇制度について少し説明する。「これくらい出る?」とそっと指を何本か立てて確認してくる。いい線ついてる。

2月某日。
若い頃同じ部署に数年いた同年齢の社員が「辞めるんだってな」。中途入社なので「オレは退職金満額出ないんだよ」となぜか愚痴られる。知らんがな。んなことより、いい年なんだからそろそろ 体重を 100キロ以内に落としたらどうか。退職金もらう前に死ぬぞ。

2月某日。
会社の玄関先で後輩とばったり。「辞めるんですかあ。寂しくなります」。ありがとう。社交辞令でもうれしいよ。用もないのにエレベーターにわざわざ乗り込んで来んでも。間近で見ると、けっこう老けたねえ君( 心の声)。自分はもっと老けてるが。てか、実は偶然、うちのすぐそばに越してきてて、これからもどうせたまに会うじゃん。

2月本日。
トイレの前で十年ほど前まで一緒の部署にいた後輩とばったり。「辞めるって聞きました。お世話になりました」。いまや中堅のエース的な彼のご丁寧な挨拶は痛み入るけど、一瞬ぎょっとするほど青白い顔と窪んだ目はどうした。君がマジメでいい奴なのはよく知ってる。死ぬなよ。